漫画(マンガ)と著作権

漫画の著作権をめぐる問題

ビジネスベースでのプロの漫画家さんの著作権問題を考える場合、場面としては、出版社、編プロとの関係とほかの関係者(原作者、原案者など)との関係を 考えていくことになります。なお、以下では契約関係のない場面での盗作、盗用などの問題は取り上げていません。

 1.漫画家と出版社

大手出版社の漫画雑誌を考えた場合、一般的に、漫画雑誌に連載されて単行本になるという流れで漫画家さんは出版社とおつきあいになるかと思います。
出版社の従来の収益モデルが、雑誌単体では赤字でも単行本の販売で利益を出してトータルで雑誌販売部分を補填するというものであることから、 漫画家さんの原稿料の設定などもそうした流れに影響を受けることになります。
また、突然雑誌が廃刊になると、漫画家さんはその後のフォローがどうなるのか、とても不安定な状況に置かれます。
さらに出版社の編集者との人間関係が重要で、いちばんの悩みどころとなります。漫画家雷句誠さん「金色のガッシュ!!」カラー原稿紛失事件訴訟(平成20(ワ)15321損害賠償請求事件)や 漫画家新城まゆさんのブログ「まゆたんブログ」などを拝見していますと、編集者と漫画家さんの関係の難しさが伝わります。
出版契約書のやりとり、ネット配信契約、デジタル二次利用契約、貸与権センター委託契約、原作使用許諾契約と、さまざまの場面で契約が必要となります。
契約書があればすべて済む問題ではありませんが、出版社との関係では契約書はまずは第一歩となります。

ところで、出版社と交渉力がある漫画家さんであれば、各出版社の出版契約書ひな型(窓口集中の独占型)を非独占型へ変更させることも可能ですが、 新人のかたや実績のない漫画家さんでは交渉自体困難が伴います。
出版社に窓口を集中させる独占型の出版契約書を使う限り、 出版社に漫画家さんのエージェントとして働いてもらうことになるので、大きなメリットがありますが、反面、ネット配信など自覚的に自らをプロモーションしようとする 漫画家さんには不要な契約内容となります。

 2.漫画家と編集プロダクション、出版社

漫画雑誌の製作にあたっては、出版社の編集部(編集社員、業務委託社員)が直接漫画家さんをハンドリングする場合のほかに、 外部の編プロが出版社との窓口となって漫画家さんたちの原稿を編集、校正、事務処理などを行う場合があります。
編プロとしては、出版社に対する発言力を強めようと漫画家さんの窓口としての地位の明確化(契約書面化)を目指したいところですが、 なかなか出版社との力関係で編プロではいかんともし難い状況があります。

 3.漫画家と原作者・原案者

「キャンディ・キャンディ事件」のように、作画者と原作者が対立してしまうと、作品自体が封印されてしまう不幸な結果となる場合があります。
クレジット表記について、作画者と原作者のどちらを大きく記載するかなども人格権にかかわる部分で重要です。 また、原作者か原案者かの違いも極めて重要なところとなります。
なんとなく、印税もふたりで折半(50%ずつ)と、あいまいに取り決めていることも多いのではないでしょうか。
作品がシリーズ化して人気が出てくると、作画者と原作者の考えの違いが表面化してくる場合もあります。 お互いの考えの表出のひとつとなる印税配分率については、最初が肝心となります。

最近(2008年)では、「軍鶏」作品をめぐって漫画家たなか亜希夫さんと原作者橋本以蔵さんとの間で訴訟が提起されています。
ここでは、漫画家さんが、原作者さんはたんなる原案提供にとどまる、としていわば「原案者なのか、原作者なのか」について争っています。 極端にいえば、アイデアや場面設定などを提供しただけの原案者には、作品に関して著作権が発生しないと考えられます。
作画者と原作者・原案者との関係は、出版社との出版契約で間接的に(印税率として)規定されるにとどまることがほとんどとなりますが、 両者が早い段階で直接作品の取扱いに関する覚書を取りかわすのも重要なことだと思われます。 原作論について触れるものとして、竹熊健太郎「マンガ原稿料はなぜ安いのか?」(2004)52頁以下。

漫画をめぐる判例

・キャンディ・キャンディ事件(アドワーク)
 最判平成13.10.25平成12(受)798出版差止等請求事件
・「弁護士のくず」事件
 東京地裁平成21.12.24平成20(ワ)5534著作権翻案物発行禁止等請求事件
・コンビニ漫画本原稿料事件
 東京地裁平成25.1.31平成23(ワ)35951損害賠償請求事件
・漫画「彼女の告白」映画翻案事件
 東京地裁平成25.11.22平成25(ワ)13598著作権侵害差止等請求事件

参考文献

同人誌問題、有害図書規制問題などについては、
永山薫、昼間たかし編著「2007-2008 マンガ論争勃発」(2007)
米澤嘉博監修「マンガと著作権-パロディと引用と同人誌と-」(2001)参照。
原稿紛失問題について、
西島大介、大谷能生「魔法なんて信じない。でも君は信じる。」(2009)

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