バレエ、ダンスの振り付けの著作権

「シャル・ウィ・ダンス」のダンスは誰のもの?振り付けの著作権めぐり提訴

産経Webニュース(2008.5.24 23:24 産経新聞2008年5月25日東京15版29頁)より

『社交ダンスブームを生み、ハリウッドでもリメークされた映画「Shall we ダンス?」 (周防正行監督)のダンスシーンの振り付けを担当した舞踏家、わたりとしお氏が、「無断でテレビ 放映やDVD化など二次利用され、著作権を侵害された」として、映画を製作した「角川映画」に約 5300万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしたことが24日、分かった。』

映画「Shall we ダンス?」の振り付けを担当した舞踏家わたりとしおさんが、 角川映画を被告として損害賠償請求訴訟を東京地裁に提訴したそうです。 わたりさんは日本テレビ「ウリナリ芸能人社交ダンス部」の指導で有名なかた。

テレビ放送、DVDなどの二次利用をめぐっての争いで、二次使用料5300万円をわたりとしおさんは 請求していますが、2008年5月20日の第一回口頭弁論では、角川映画側はわたりとしおさんの著作権者性から 争っているそうです。

わたりとしおさんの振り付けに創作性(*)があって、わたりさんが著作者、著作権者となるのか、 かりに著作権者だとしてもすでに受け取ったダンス指導料150万円のなかに、二次利用料についても ざっくり含まれていたとして、「黙示の合意」(契約関係)などがあったと認められるのかどうか。 なお、映画作品は1996年発表ですから、すでに10年以上経過していますが、DVD販売は2005年のようです。 アマゾンで調べてみると、『「恋の10ダンス」ビデオクリップ』など特典映像もあるようですので、 こうした部分のダンスの著作物性も争点になっているのかもしれません。
裁判の行方を注目したいと思います。

■追記(2012.3.30)
「Shall we ダンス?」振り付け事件
東京地裁平成24.2.28平成20(ワ)9300損害賠償請求事件

(*)著作権法第10条1項3号「舞踏又は無言劇の著作物」
  「能楽、バレエ等の振り付けがこれに該当するが、社交ダンスのステップ、
    などの振り付けはこれにあたらないこと。」
   (著作権法令研究会編「著作権関係法令実務提要1」265頁)

過去の裁判例

振り付けの創作性にかかわる過去の判例としては、以下のようなものがあります。

(1)バレエ作品振付け著作権事件(ベジャール「アダージェット」事件)
 東京地裁平成10.11.20平成8(ワ)19539損害賠償等請求事件

 田村善之「上演権侵害の主体――バレエ作品振付け著作権事件」
 『著作権判例百選3』130頁以下参照

(2)日本舞踊家元事件
 福岡高裁平成14.12.26平成11(ネ)358著作権確認等請求控訴事件
 福岡地裁小倉支部平成11.3.23平成7(ワ)240、1126

 知的所有権問題研究会編「最新著作権関係判例と実務」(2007)533頁以下
 [團潤子]

(3)手あそび歌出版差止事件
 東京地裁平成21.8.28平成20(ワ)4692出版差止等請求事件

参考文献

下記の論文では、著作権法第10条1項3号の立法趣旨や「固定」と「演劇性」の要件性、舞踏のアイデアと創作性、「パ」(バレエのステップ)の著作物性について述べられています。

 藤本寧「「舞踊の著作物」の立法経緯とバレエの創作性について」
     『大学院研究年報 法学研究科篇』(中央大学 2006.2)35号337頁以下

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