人形・フィギュアの著作権

人形・フィギュアの著作権をめぐる問題

応用美術と美術工芸

1点ものの純粋美術品については著作権法上の問題はさほど大きくはないのですが、量産実用工芸品(応用美術)のデザインについては、意匠法との関係も検討しなければなりません。
また、特に伝統工芸品の場合、著作権法上の問題として捉えることができても創作性の有無があるのかどうかがその歴史性をふまえて争点となります。
量産工芸品の保護について判例に現れた事例を通してみてみると、著作権法、意匠法のほかに、型(石膏型など)の営業秘密としての保護の要否(不正競争防止法)、さらにはネーミングの保護(商標法)の側面もあることが明らかとなります。
ところで、人形といってもフィギュア、根付、ぬいぐるみ、地方伝統の工芸人形など様々なものがありますが、その保護のあり方についてはたとえば日本人形の製作・販売にかかわる事業者の方々が「日本人形著作権協会」を2005年9月7日に発足させていて、日本人形の著作権保護に尽力されています(東京都雛人形工業協同組合内に設置)。

ぬいぐるみ人形の紙型(パターン)やアパレル縫製のパターンなど、パターン自体に著作権が発生するかどうかは微妙(創作性の有無、著作権法による保護の要否など)ですが、業者の場合は競業者間での不正競争防止法事案になる可能性は十分にあります。 いずれにしましても、安易な既製品の模倣(レプリカ、リスペクト)には注意が必要です。
人形をはじめ型工程のあるジュエリーやアクセサリーなど、インダストリアルデザインの保護につきまして、お気軽にお問い合わせフォームよりご相談ください。

人形をめぐる判例

以下は、人形、フィギュアをめぐって著作権法、不正競争防止法、契約上の問題が争点となった事案です。

・博多人形赤とんぼ事件
長崎地裁佐世保支部昭和48.2.7昭和47(ヨ)53著作権民事仮処分事件
 *彩色素焼人形の「ポン抜き」無断複製が問題となった事案です。

・スヌーピー人形模造品販売事件
名古屋地裁昭和61.2.28昭和59(ワ)2636損害賠償事件
 *スヌーピー人形の模造品販売について問題となった事案です。

・ペンギン人形事件
東京地裁昭和62.7.17昭和60(ワ)8776不正競争行為等差止請求事件
 *ペンギンのぬいぐるみの類似性が問題となった事案です。

・キン肉マンプラスチック消しゴム事件
東京地裁昭和61.9.19昭和60(ワ)7392著作権侵害差止等請求事件
 *アニメキャラクターの消しゴムの無断製造が問題となった事案です。

・「クレヨンしんちゃん」ぬいぐるみ模造品販売刑事事件
松山地裁平成7.4.19平成6(わ)184著作権法違反被告事件
 *クレヨンしんちゃんの縫いぐるみ模造品製造販売の事案です。

・キューピー人形事件
東京地裁平成11.11.17平成10(ワ)13236著作権侵害差止等請求事件
東京高裁平成13.5.30平成11(ネ)6345著作権侵害差止等請求控訴事件
 *キューピー人形の創作性、二次的著作物性などが問題となった事案です。

・「トントゥ」ぬいぐるみ人形事件
東京地裁平成14.1.31平成13(ワ)12516著作権侵害差止請求事件
 *ぬいぐるみ人形のライセンス契約が問題となった事案です。

・ファービー事件
仙台高裁平成14.7.9平成13(う)177著作権法違反被告事件
 *電池で動く玩具の模造品が問題となった刑事事件です。

・Rope Picnic広告素材事件
東京地裁平成17.7.20平成17(ワ)313損害賠償等請求事件
 *ロシア民族玩具マトリョーシカ人形をモチーフとしたデザインの著作物性が争われた事案です。

・チョコエッグフィギュア模型原型事件
大阪高裁H17. 7.28平成16(ネ)3893違約金等本訴等請求控訴事件
 *食玩フィギュアのライセンス契約が問題となった事案です。

・ジョン万次郎銅像事件
知財高裁平成18.2.27平成17(ネ)10100等著作者人格権確認等請求控訴事件
東京地裁平成17.6.23平成15(ワ)13385著作者人格権確認等請求事件
 *ブロンズ像の著作者認定(塑像の創作性)が問題となった事案です。

・フィギアドール形態事件
知財高裁平成18.1.25 平成17(ネ)10060等損害賠償等請求控訴事件等
 *フィギュア素材制作の業務委託契約が問題となった事案です。

・皮革人形作品写真集事件
知財高裁平成19.7.25平成19(ネ)10022損害賠償等請求控訴事件
 *皮革人形作品の写真集の著作権の帰属が問題となった事案です。

・堤人形事件
仙台地裁平成20.1.31平成15(ワ)683不正競業行為差止等請求事件
 *伝統工芸品の石膏型の営業秘密性が問題となった事案です。

・ファンシーグッズ形態模倣事件
東京地裁平成20.7.4平成19(ワ)19275損害賠償等請求事件
 *大量生産実用品のグッズの著作物性が問題となった事案です。

あっせん事例

・糸繰り人形の著作権の帰属について人形製作者の遺族と人形劇団との紛争
 *権利の帰属問題は棚上げし、人形の使用条件等を取り決めることで解決
  (文化庁長官官房著作権課「あっせん申請の手引き」より)

参考文献

木村 豊「応用美術の保護-現行著作権法制定の経緯を中心として」
      『民法と著作権法の諸問題 半田正夫教授還暦記念論集』
      (1993)580頁以下
生駒正文「応用美術の著作物性に関する研究-とくに独法による
       若干の比較検討」同598頁以下
満田重昭「著作権と意匠権の累積」
       同616頁以下
  同   「デザインと美術の著作物」斉藤博、牧野利秋編
      『裁判実務大系 知的財産関係訴訟法 第27巻』
      (1997)83頁以下
田村善之「著作権法概説 第二版」(2001)31頁以下
牛木理一「デザイン、キャラクター、パブリシティの保護」
      (2005)103頁以下、209頁以下
内藤裕之「応用美術と美術の著作物性」牧野利秋・飯村敏明編
      『新・裁判実務大系 著作権関係訴訟法』
      (2004)155頁以下
本山雅弘「応用美術の保護をめぐる著作権の限界づけと意匠権の保護対象」
      『牛木理一先生古稀記念 意匠法及び周辺法の現代的課題』
      (2005)469頁以下
中山信弘「著作権法」(2007)138頁以下
岡 邦俊『著作権の事件簿』(2007)188頁以下
牛木理一「彩色素焼人形-博多人形事件」
      『著作権判例百選第二版』(1994)22頁以下
岡 邦俊「テレビ漫画のキャラクター-キン肉マン事件」
      『著作権判例百選第二版』(1994)48頁以下
松尾和子「彩色素焼人形-博多人形事件」
      『著作権判例百選第三版』(2001)24頁以下
小松一雄編「不正競業訴訟の実務」(2005)345頁以下
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)498頁以下、
        同(下)781頁

参考サイト

日本人形著作権協会
(社)日本デザイン保護協会 
(社)日本ジュウリーデザイナー協会 

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