ネットと著作権(ロクラク事件)
ネット事業での裁判所の政策的価値判断
テレビ番組海外転送サービス「ロクラク」にみる知財高裁の立ち位置
知財高裁が平成21年1月27日、ロクラク事件の判決で、ネットと著作権に関する政策的な価値判断を
明確に示しました(平成20(ネ)10055著作権侵害差止等請求控訴事件)。
『かつて,デジタル技術は今日のように発達しておらず,インターネットが普及していない環境下においては,テレビ放送をビデオ等の媒体に録画した後,これを海外にいる利用者が入手して初めて我が国で放送されたテレビ番組の視聴が可能になったものであるが,当然のことながら上記方法に由来する時間的遅延や媒体の授受に伴う相当額の経済的出費が避けられないものであった。』
『しかしながら,我が国と海外との交流が飛躍的に拡大し,国内で放送されたテレビ番組の視聴に対する需要が急増する中,デジタル技術の飛躍的進展とインターネット環境の急速な整備により従来技術の上記のような制約を克服して,海外にいながら我が国で放送されるテレビ番組の視聴が時間的にも経済的にも著しく容易になったものである。』
『そして,技術の飛躍的進展に伴い,新たな商品開発やサービスが創生され,より利便性の高い製品が需用者の間に普及し,家電製品としての地位を確立していく過程を辿ることは技術革新の歴史を振り返れば明らかなところである。』
『本件サービスにおいても,利用者における適法な私的利用のための環境条件等の提供を図るものであるから,かかるサービスを利用する者が増大・累積したからといって本来適法な行為が違法に転化する余地はなく,もとよりこれにより被控訴人らの正当な利益が侵害されるものでもない。』
(判決文32頁参照 *区切りを入れています)
知財高裁は、エンドユーザーの利用行為が適法な私的使用目的複製(著作権法30条)
であることを基本的な視座としつつ、利用者の利便性を追求する事業者のサービスの適法性を肯定。
カラオケ法理を採用したクラブキャッツアイ事件とは事案を異にすることにも言及し、
著作権法がネットを利用した技術革新とその利益の享受を阻害してはならないという、
明確な意思を上記のように表明しています。
最高裁の判断が待たれますが、ネットと著作権に関わる事件についての重要な判断として記憶に残る判決といえます。
ブログ記事(2009年1月29日)
ロクラク事件(控訴審)
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