日本の著作権の歴史

明治以降の日本の著作権の歴史

福沢諭吉がcopy rightを「版権」と翻訳してその概念を輸入、思想普及に尽力し、また明治19年(1886)の官報にはじめて「著作権」という言葉が使われ、 さらに旧著作権法が明治32年(1899)制定(現行著作権法は昭和45年(1970)全面改正) されて以来140年近く日本での著作権の歴史があるわけですが(江戸時代のことはひとまず措きます)、今も昔も著作権紛争の本質 (海賊版ビジネスや著作者の創作物へのこだわり)が変わらないのは、 人間の本性自体が変わっていないことによるものかもしれません。伊藤後掲書(100話)の多くの事例を読むと、その感を強くします。
明治時代以降の著作権法(出版条例、版権条例)が出版、言論統制の道具としての側面が強かったという歴史は、現行著作権法も表現の自由や 経済活動の自由との間で常に緊張関係に立っていることと合わせ念頭に置いておかなくてはならない歴史認識です。
ところで、著作権エージェントであったプラーゲ博士の活動によって日本での著作権思想が前進したことは間違いないところです。
もっとも、歴史に「もしも」を言っても仕方がないのですが、「もしも、プラーゲ旋風がなければ、いまの放送局とジャスラックとの 包括契約の内容(価格設定)はどうなっていたか?」、思いめぐらすところではあります。

参考文献

伊藤信男編「綜合近代著作権文化史年表」(1960 日本著作権協会刊行版)
伊藤信男「著作権事件100話-側面より見た著作権発達史-」(1976)
倉田喜弘「著作権史話」(1980)
フィリップ・パレス著、宮澤溥明訳「音楽著作権の歴史」(1988)
日本音楽著作権協会編著「日本音楽著作権史」(上・下)(1990)
吉村 保「発掘日本著作権史」(1993)
原 秀成「明治初年における著作権法制の受容と変容」日本出版学会編『出版研究』25号(1995)63頁以下
森 哲司「日本の著作権の生みの親 ウィルヘルム・プラーゲ」(1996)
白田秀彰「コピーライトの史的展開」(1998)
大家重夫「改訂版 ニッポン著作権物語-プラーゲ博士の摘発録-」(1999)
文化庁監修「著作権法百年史」(2000)
全日本シーエム放送連盟(ACC)著作権委員会編「CM著作権 昨日・今日・明日」(2003)
大家重夫「著作権を確立した人々第2版-福沢諭吉先生、水野錬太郎博士、プラーゲ博士…-」(2004)
朝妻一郎、音楽出版社協会編「日本における音楽出版社の歩み-MPAの三十年・インタビュー集-第二版」(2005)
石井 正「知的財産の歴史と現代」(2005)
山田奨治「〈海賊版〉の思想 18世紀英国の永久コピーライト闘争」(2007)
栗原裕一郎「〈盗作〉の文学史 市場・メディア・著作権」(2008)

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